●今回は中学生向け●
go to bed をちゃんと理解する
学而会 英語のおまけ箱 10箱目
I go to bed at eleven.
は、単純な英文ですが、 bed は普通に考えたら「数えられるモノ」なのに、なんで a がついていなんだろうと疑問に思ったことはありませんか?
たしかに bed は「数えられる名詞」です。
だから、冠詞( a や the のこと)がついたり、複数形( beds )となったりするはずです。
上の英文で単に bed となっているのは、bed を「数えられないモノ」とみなしているからです。
言い方を変えると、この場合の bed は品物ではなくて、抽象的概念というか、存在意義として用いているからです。
bed の存在意義は何でしょう?
「体を横たえること」「寝ること」ですよね。
だから go to bed というのは「ベッドに行く」ではありません。
「寝る」「床に就く」「就寝する」ということなんです。
ベッドではなくて、日本人が布団で寝る場合でも、キャンプのとき寝袋で寝る場合でも go to bed なんです。
go to school も同様です。
school の存在意義は?
「勉強すること」ですよね。
よって、go to school は「学校へ勉強しに行く」「学校へ通う」ということです。
親御さんがPTAの会合で学校へ行く場合だったり、建築業者が校舎の補修工事などに行く場合は go to a school とか go to the school となるでしょう。
go to hospital は「(患者が) 病気やケガの治療のために病院へ行く」んです。
建築業者や薬品のセールスマンが営業のために行くのなら、go to a(the) hospital です。
church (教会) の存在意義は「神に祈ること」です。
よって、go to church は「教会へ礼拝に行く」ということになります。
建築業者が教会に修理工事をしに行くのなら go to a(the) church です。
prison という単語を知っていますか?「刑務所」の意です。
go to prison は「(罪の償いで) 刑務所に入る」ということになります。
go to a(the) prison となると、建築業者が……もう、いいですか?
中3で現在完了の文を習ったときに、どういうわけかやたら出てくる be sick in bed という言い回しも、「病気でベッドにいる」と訳すのは感心できません。
「病気で寝込んでいる」ということです。
ベッドだろうが布団だろうが畳の上だろうが、病気で体を横たえて安静にしていれば be sick in bed なんです。
明治生まれの文筆家で、内田百閒(うちだ ひゃっけん)という人の書いた「第二阿房(あほう)列車」という随筆に次のような話があります。
ちょいアレンジして話しますと…百閒先生は弟子の一人を相棒にして、気ままな汽車旅行に出かけます。
ある寝台車に乗ったとき、百閒先生は非常にタバコを吸いたくなりました。
寝台の枕元には No smoking in bed と、英語の表示があります。
先生は弟子に「きみ、この英語を訳してみたまえ」と言います。
「ベッドでタバコを吸っちゃいけない、でしょう」と弟子。
「それはちがう」と先生は言います。
「in bed には冠詞がない。
ということは、bed という実体を指してはいない。
ベッドでタバコを吸ってはいかん、ではなくて、寝ていてタバコを吸ってはいかんということじゃないのか。
そもそも、汽車や船の寝台は bed とは言わない。
バアス berth と呼ぶのである。
だから、この in bed というのは、寝ていてとか寝たままでという意味だと解釈すべきだろう。
我々は寝ていない。寝台の上で起きている。
さあ、一服しよう」
百閒先生、あざやか!です。
●語り手/英語科・鈴田●