●今回は高校生向け●
どんな美容師だよッ!
学而会 英語のおまけ箱 23箱目
「使役動詞」という言葉を聞いたことがありますか?
「人に~させる、~してもらう」といった意の動詞のことです。
make, let, have の3つです。
make A C
let A C
have A C
どれも C の部分は動詞の原形が来ます。
訳しちゃうと、すべて「AにCさせる、Cしてもらう」と、同じような具合になります。
しかし、それぞれ、ニュアンスの違いがあることも押さえておきましょう。
学而会は言うまでもなく、学校や他塾の先生たちもがっちり教えてくれることではあります。
ただ、「英語のおまけ箱」12箱目で紹介したマーク・ピーターセン氏が「マーク・ピーターセンの見るだけでわかる英文法」(アスコム刊)という著書のなかで、使役動詞の意味の違いをハッキリさせるために、非常に面白い例文を挙げていますので、紹介したいと思います(66頁~73頁)。
氏は “美容師に髪を短く切ってもらった” という話に統一して、説明しています。
まず、make は、一言でいうと「強制」です。
「相手に無理強いして何かをさせる」んです。
I made the beautician cut my hair short.
これは、「あなたの髪を短く切るのは絶対イヤです」という美容師に(どんな美容師だよッ!)、「切らないと痛い目に合わせるぞ」と言って、無理矢理、強制して切らせたということです。
force A to ~(~は動詞の原形)や compel A to ~(~は動詞の原形)を用いて同意の文にもできます(どちらも『A に~することを強制する』)。
let は「許可」です。
I let the beautician cut may hair short.
これは「ぜひ、あなたの髪を短く切りたい」と切望する美容師がいて(どんな美容師だよッ!)、いいですよ、どうぞと言って、切らせたわけです。
allow A to ~(~は動詞の原形)や permit A to ~(~は動詞の原形)を用いて同意の文にもできます(どちらも『A が~することを許す、許可する』)。
have は「強制」や「許可」といったことと関係はなくて、させるほうと、してもらうほうとの関係が「頼みさえすれば当然それをしてもらえる」間柄であるときに使います。
美容院は、お金を払って髪を好きなようにしてもらう当然の場所ですから、「美容師に髪を短く切ってもらった」は、
I had the beautician cut my hair short.
が 最もしっくり来るわけです。
また、使役動詞として get も挙げる文法書や先生も多いですが、わたしは個人的には、get は使役動詞の仲間には入れません。
用法がちがうからです。
上記3動詞でいう C の部分が、動詞原形ではなくて、不定詞( to ~ )が来るからです。
get A to ~(~は動詞の原形)
という形で使います。
get A to ~ は 「なんとか A を説得して~させる、してもらう」という感です。
I got the beautician to cut my hair short.
この場合、この美容師は超カリスマ美容師です。
「わたしはアーティスト。客の要望は、一切受けない。自分の心のおもむくままに客の髪をイジるのよ」という美容師です(どんな美容師だよッ!)。
頼みさえすれば当然それをしてもらえる美容師ではありません。
その美容師に、「なんとか、短く切ってもらえませんかね」と、説得して切ってもらったわけです。
なお、今回の記事に登場した動詞と用法はすべて、大学入試英語の基本&頻出事項です。
受験生は、きっちりと覚えておいてください。
●語り手/英語科・鈴田●