●今回は高校生向け●
英語の長文につまずく理由はコレかも
学而会 英語のおまけ箱 1箱目
大学受験生が入試長文に挑む際、個々の英文の構造を見抜く力や語彙力は十分あるにもかかわらず、文章を読み取っていくのに苦労するならば、それは「教養の足りなさ」に原因があるかも。
たとえば、レイチェル・カーソンという人が書いた「沈黙の春」という有名な本があります。
アメリカで50年以上も前に出版されたものです。
害虫を駆除するために森林に農薬を散布した結果、次々と生態系に影響が生じ、最終的に森林に小鳥が一羽もいなくなった、ということを述べた本です。
今でこそ、科学の無謀な進歩が地球環境に悪い影響を及ぼしていることが論じられていますが、当時は、科学の発展は無条件に人間を幸福に導くと皆が信じていた時代。
だから、かのじょの著書は大いに批判されました。
その後、調査が進んで、かのじょの説は正しかったことが解明され、科学至上主義に染まっていた世間に警鐘を鳴らしたんです。
たとえ、この本を実際に読んだことはなくても、受験生は上記ぐらいの知識は「教養」として、あったほうが良いです。
長文を読み進めていて、Rachel Carson とか Silent Spring といった単語が出てきたら、これだけで、その長文の内容というか、少なくとも方向性が推測できます。
「科学を盲信してはいけない」「生態系を破壊することは結局、人間にも報いがくる」系の内容ではないかと。
英文を読み進めていくのがラクになりませんか?
あるいは、politically correct を「政治的に正しい」と訳して満足していてはいけません。
具体的にはどういうことかを「教養」として知っておいたほうが絶対良いです。
なぜ、近年 chairman (議長) は chairperson に、 fireman (消防士) は fire fighter と言い換えられるようになってきたのか。
なぜ、アメリカの公立学校ではクリスマスのお祝いができなくなってきたのか、といった社会現象に合点がいきますよ。
digital divide, media literacy という語があります。
「情報格差」「メディアリテラシー」が、いちおう定訳になっています。
ただ、訳語を覚えておくだけではなくて、具体的にはどういうことなのかを、受験生はぜひ知っておくべきでしょう。
大学入試の長文はほとんどが論説文ですから、こういった「教養」が最初からあると、入試英文を読み進めていくのに強力な武器となります。
学而会の先生は、英文読解以前の、こういった知識についての言及と解説、身につけるためには何をしたらいいかの指導もしてくれますよ。
●語り手/英語科・鈴田●