●今回は中学生向け●
61箱目「わたしの隣人、トトロ」
自由英作文やスピーチで日本の小説、漫画、映画などを語る場合、作品題名は日本語のままで紹介して良いのか、それとも自分なりに英語に訳して紹介したほうが良いのか、といった質問を受けることがあります。
中学生の場合は基本、日本語のままで良いでしょう。
実は、日本の作品が英語圏に輸出される場合、元の日本語題名をそのまんま英語に訳すというのではなくて、英語圏独自の題名がつけられることが多いんです。
夏目漱石の小説「吾輩は猫である」の “I Am a Cat” とか、映画「君の名は。」の“Your Name.”のように、ホントにそのまんま、という感じの題名の場合もあることはありますが、こういう例は少ないです。
“Frozen”(凍りついて)という題のアメリカ製のアニメ映画が、日本では「アナと雪の女王」という、独自の題名がつけられたのと同じようなものです。
例えば、「鬼滅の刃」は英語圏では
“Demon Slayer”
です。
demon〔ディーモン〕は「鬼」
slayer〔スレイヤ〕は、辞書にはふつう「殺し屋」「殺害者」と記載してありますが、殺害相手は怪物とか妖怪とか人間じゃないもの、という感が強い語です。
西洋の昔話とかRPGなどにはよく、dragon slayer が登場します。
人間を困らせているドラゴン(竜)を退治する専門家ですね。
dragon slayer という語がポピュラーな英語圏の人々には、
“Demon Slayer”
というタイトルは受け入れやすいと思われます。
「進撃の巨人」は
“Attack on Titan”
です。
attack〔アタック〕 on A で「Aに対する攻撃、襲撃」
titan〔タイタン〕は「巨人」
「巨人への攻撃」というわけですが、元の日本語とはビミョーにニュアンスが違っていますね。
映画「となりのトトロ」は
“My Neighbor Totoro”
です。
neighbor〔ネイバ〕は入試重要語で「隣人」「近所の人」の意。
「わたしの隣人、トトロ」というわけですが、このように、あなたが紹介したい日本作品の、英語圏での公式題名がわかっている場合は、それは述べてあげてください。
述べ方は、大学受験生なら、それなりにいろんな語句や構文を使うでしょうが、中学生が最も簡単にやれるのは、例えば「となりのトトロ」だったら、
“Tonari no Totoro,” or “My Neighbor Totoro” in English
とやれば良いでしょう。
or の後に英語版題名をつければいいのです。
in English は、特になくてもOKです。
ここの or は、「言い換えれば」「つまり」の意で、前出の語をわかりやすく、あるいはより正確に言い換える働きを持ちます。
natto, or fermented soybeans
「納豆、すなわち発酵させたダイズ」
という具合です。(例文:学研「アンカーコスミカ英和辞典」より)
もちろん、「となりのトトロ」はアニメ映画である、という情報も添付してください(前々回59箱目の話をお忘れなく)。
Today, I’m going to talk about one of my favorite animated movies. It is “Tonari no Totoro,” or “My Neighbor Totoro.”
…などと、中学生の英語スピーチの出だしとしては、とても立派だと思います。
㊟ animated movie〔アニメイティッド ムーヴィ〕…「アニメ映画」
●語り手/英語科・鈴田●