●今回は中高生向け●
86箱目「『コナン』はアメリカで…」
Case closed. という表現があります。
文法的に考えると、おそらくこれは、
The case is closed.
ということから来ていると思われます。
case は普通、高校生だと「場合」とか「事例」といった意味で習いますが、ここでのcase は「事件」という意味だと思ってください。
「事件は閉じられた」
↓
「この事件については、もうこれ以上議論したり捜査する必要はない」
↓
「これで、この事件は解決とする」
ということなんです。
たとえば、ミステリー小説で、名探偵が事件関係者一同を広間に集めて、自分の推理を披露して、真犯人に犯行を認めさせたあとに、探偵が「決め」のセリフとして発するのが、
Case closed.
です。
古いアメリカ映画で、法廷で裁判長が、裁判終了に際して、
Case closed.
と言って木槌で台を叩く、といったシーンを見たことがあります。
つまり、
Case closed.
は、日本語の「これにて一件落着」という言い方に、すごーく近いです。
さて、話は変わります。
「名探偵コナン」は皆、ご存知ですね。
連載が始まって、およそ30年もつづいている人気漫画作品です。
テレビアニメにも劇場映画にもなっています。
アメリカでも原作本は出版されているのですが(わたしも何冊か持っています)、この作品のアメリカでのタイトルは、
Case Closed
なんです。
Detective Conan ではないんです。*detective〔ディテクティヴ〕…「探偵」
もちろん、「コナン」を知っているアメリカ人ならば、Detective Conan と言っても「ああ、あの漫画のことね」とわかってくれますが、作品のタイトルとしては、
Case Closed
なんです。
たしかにこの作品は毎回、コナンが謎に満ちた事件を解決していくストーリーですけれど、それにしても、なぜ、アメリカではタイトルにConanの名を入れなかったのか?と気になりますね。
正確なことはわかりませんが、わたしなりのちょっとした推理はあります。
漫画や小説などフィクションの世界で「コナン」という名のキャラクターといえば、ほぼ100%の日本人は「名探偵コナン」を挙げるはずですが、英語圏の人々にとってはちがいます。
かれらにとっては「コナン」といえば普通、1930年代にアメリカで刊行され始めた冒険ファンタージー小説シリーズの主人公のことです(筋肉ムキムキなやつです)。
この作品群は、日本では「英雄コナン」とか「蛮族コナン」と呼ばれていて、最近まで新訳も刊行されていたと思います。
この小説シリーズは、英語圏では非常に多くのファン、マニアがいます。
漫画「名探偵コナン」において、アメリカでは Conan の名をタイトルで使わなかったのは、この小説シリーズに遠慮して…といったところがあったと思うのですが。
●語り手/英語科・鈴田