●今回は中高生向け●
123箱目「もうひとつのバンドエイド」
今から40年前の秋のことです。
軍事政権下のエチオピアが干ばつに見舞われ、数百万人が被災、餓死していました。
イギリスの、あるロックミュージシャンが、このことをテレビのニュースで知り、大ショックを受けます。
「エチオピアの人々のために自分ができることはないだろうか」と考え、思いついたのが楽曲の制作。
それをCD化して、その売り上げをエチオピアに全額寄付する、というものです。
かれの呼びかけに40人近くのアーティストたちが呼応しました。
全員が、当時イギリスとアイルランドで大活躍していた、ロック、ポップスの大物アーティストたちばかりです。
制作された曲のタイトルは
Do They Know It’s Christmas Time?
「あの人たちは、今がクリスマスであるということを知っているのだろうか」
というもの。
they というのは、エチオピアの人々のことですね。
普段は自分のソロ・アルバムしか出さない大物ミュージシャンたちが、この歌を数小節ずつリレー形式で、あるいはコーラスで歌い継いでいくんです。
結果的に、このプロジェクトは世界中から賞賛を受け、大成功に終わりました。
関係者側が予想していた額よりも100倍以上の額を売り上げて、全額エチオピアへ贈られたそうです。
さて、このプロジェクトに参加したメンバーたちには、ユニット名がありました。
Band Aid〔バンドエイド〕と言います。
band 「楽団、バンド」+ aid「救援、援助」を合わせたものですね。
そしてもちろん、皆さん、お気づきだと思いますが、前回122箱目でご紹介した超有名な絆創膏、
band-aid
と掛詞になっているんです。
もっとも、絆創膏のほうは、
bandage「包帯」+ first-aid「救急の」
を合わせたものだそうですが。
わたしは、このユニット名を初めて聞いたとき、「ウマいネーミングだなあ」と感心しました。
ちなみに、Band Aid プロジェクトは、初回を含めてこれまでに全4回行われています。
もちろん、参加メンバーは毎回違っていますが、全員が有名ミュージシャンたちであることは変わりません。
また、初回Band Aid の成功を目にして、アメリカのミュージシャンたちの間でも「わたしたちもやるべきじゃないか?」という声が高まり、Band Aid から約1年後、アメリカでも同様のプロジェクトが行われました。
曲名は We Are the Worldで、ユニット名は USA for Africa と言います。
●語り手/英語科・鈴田